神奈川 看護師バイト

看護実習で一番印象に残っているエピソード

 看護学校2年生の初めての実習は、群馬大学病院で5日間行いました。担当した患者さんは、話すことができないSさん60代女性、病名が胸線種でした。
全身に転移があり、末期の状態でした。私は、胸線種という病気の知識がなかったので戸惑いました。まず、病態を理解しないとアセスメントして看護計画を立てることができ ないので、1日目の実習が終わり帰って病態を理解することがとても大変でした。
 全身に転移があり、積極的な治療というよりはモルヒネを使ってとにかく苦痛を緩和する治療だったので、私の看護計画もSさんが感じている痛み、しびれ、不安などの苦痛 を取り除くことを目標にしました。看護師や担当教官と一緒に全身清拭を行ったり、髪を洗ったりしました。また、全身の浮腫が酷かったため、特に下半身を中心にマッサージ をしました。Sさんは1人息子さんと2人暮らしで、面会に来ていた息子さんの気持ちを伺ったり、Sさんのお人柄など教えていただいたりもしました。
息子さんは、「学生さんと話ができて良いです。学生さんに良くしていただいてありがたい」と何度も何度も言っていただいたことをよく覚えています。
 そして、実習最終日の朝病棟に行くと、Sさんは尿量が減り、昏睡状態と聞かされ動揺しました。これまでも私の問いかけに応えることはできなかったものの、しっかり目を開けて私を見ていたSさんでしたが、その日は目を閉じたままで私は声をかけ続けることしかできませんでした。
 実習終了約2時間前、心電図の波形が乱れ、医師や看護師がバタバタし始めたとき、私は思わず「Sさん!Sさん、ありがとうございます」と大きな声で言うと、なんとSさんが突然パっと大きく目を見開いて、一度大きく息を吸ったのです。とても驚きました。そして、数分後息を引き取りました。
 私は何の心の準備もできないままでしたが、Sさんの死後の処置を看護師とともに行わせていただきことができ、貴重な経験をしました。
息を引き取る直前に大きく見開いたSさんのお顔は、何かのメッセージがあるように感じて忘れることはありません。